登壇者の紹介

午前の部

特別講演

山本 尚

中部大学ペプチド研究センター長、卓越教授

「大改革が必要な我が国のイノベーション」
失われた30年で我が国は米国のような画期的な科学技術は生み出せず、空白の時間を作った。米国のグーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン(GAFA)のような革新的組織を産み出せず、さらに、残念ながら科学技術では欧米にみられる独立した研究組織を持つ若手研究者が育成しなかった。また、若手研究者が破壊的イノベーションに取り掛かることも旧式な大学の組織から不可能であった。これは日本の大学が必要とされた、研究の組織改革に何ら取り組まなかったことに由来する。こうした我が国の問題についての話をする。

講演1「化学×情報」

瀧川 一学

北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)特任教授/
京都大学データ科学イノベーション研究センター特定教授

「機械学習を科学研究に使うとは?」
「AI」や「機械学習」が一般的で身近な技術となった現在、こうした技術を科学研究に使えば今までの古式ゆかしいやり方より研究が飛躍的に進みそうに思えるかもしれない。その燃料となるデータは実際たくさんある。しかし、AIに丸投げしておけば科学者が寝ている間に画期的な新薬や新材料がバンバン見つかるような未来は全く来る気配がない。今回の講演では、このギャップの裏側を機械学習の観点から解説し、こうした研究のチャレンジと面白さを紹介する。

講演2「認知発達科学×情報」

長井 志江

東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構
(WPI-IRCN)特任教授

「ロボティクスが解き明かす知能の原理」
ヒトはどのように知能を獲得するのでしょうか。この究極の問いに迫る方法の一つに、ヒトのように学習・発達するロボットを創るという手法があります。ヒトの脳や身体を模したニューラルネットワークとロボットを設計することで、脳の予測機能や身体を介した多感覚運動経験の重要性が明らかになってきました。本講演では、ヒトのように多様で連続な認知発達過程を再現することで、ロボティクスが知能の原理解明にどのように貢献してきたのか、最新の研究成果を紹介します。

講演3「材料×情報」

田村 亮

物質・材料研究機構(NIMS)マテリアル基盤研究センター
材料設計分野 データ駆動型アルゴリズムチーム
チームリーダー

「情報科学の⼒で材料研究に⾰新を!」
機械学習や⼈⼯知能技術を利⽤することで、材料開発を加速させ、全く新しい技術を創⽣する試みが⾏われています。これをマテリアルズ・インフォマティクス(MI)といいます。MI研究事例として、ロボットと⼈⼯知能を融合させ、⼈が⼀切
介⼊せずに新材料を開発するプラットフォームを紹介します。また、機械学習とセンサー技術を融合することで、ニオイの理解を促進させる技術を紹介します。

パネルディスカッション

中村 景子(ファシリテーター)

サイエンスコミュニケーター/ (株) スペースタイム代表取締役

画像処理、音声認識を学び、大手メーカーでは画像診断機器の設計を経験。北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニットCoSTEP修了(2006年)後、サイエンスと社会の問題を解決するサイエンスコミュニケーションの会社を起業。さまざまなアプローチで研究をわかりやすく伝える仕事をしている中で、期待以上の「その手があったか!」と言ってもらえる企画提案を心がけている。

(株)スペースタイム
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニットCoSTEP

午後の部

話題提供1

本セッションでは北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)のステッカー・コリン(写真左)から、計算科学・情報科学・実験科学の融合領域における研究成果を紹介します。北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)の川本思心さん(中央)からは、ICReDDリスト特任教授の2021年ノーベル化学賞受賞にかかる、動画などを通じた情報発信について、シオリグラフィック株式会社の足立詩織さん(右)から、デザインを通じてICReDDの研究をわかりやすく伝えるニュースポスター作成について紹介します。

話題提供2

本セッションでは、化学と生物学の融合領域における最先端の研究成果をグローバルに発信するための視覚コミュニケーションの事例について紹介します。WPI-iCeMSの高宮ミンディ(左)からは、一般向けに研究成果をシンプルに分かりやすく伝えるためのプレスリリースのイラスト制作について、WPI-ITbMの髙橋一誠(右)からは、研究コミュニティに向けて研究成果のインパクトを伝えるための学術雑誌の表紙イラスト制作についてお話しします。

話題提供3

宇宙はどのように始まったのでしょうか?東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(WPI-Kavli IPMU)では主に数学、物理学、天文学分野の研究者が協力して、研究を進めています。巨大宇宙望遠鏡、地下にある観測装置など、大規模観測や大型実験の研究成果をどのように文章にまとめて世界中に発信しているのかについて Kavli IPMU の角林元子(左)が、そして目に見えない研究、宇宙を数式で描く理論研究についてどのように人々に共有するのかについて Kavli IPMU の坪井あや(右)が紹介します。