2024年7月末、私は猛暑が続く岐阜を離れ、涼しい新千歳空港へと降り立ちました。これまでにも北海道を訪れたことはありましたが、今回は特にその気温差に驚かされました。日本国内でありながら、まるで別の国に来たような感覚です。快適な気候の中で一夏を過ごせるという期待感に、自然と気分が高まったことを覚えています。
今回の北海道滞在は、MANABIYAというプログラムに参加するためでした。このプログラムは、日本だけでなく世界中から学生や教員が集まるもので、その年の学会で美多教授が熱心にプロモーションをしていたことがきっかけで知りました。当時、私の研究には計算化学的な解決が必要だと感じており、参加を決めました。
計算化学といえば、多くの有機化学系の研究者がGaussianを思い浮かべるでしょう。私もその一人です。また、GRRMというプログラムについても論文で目にしたことがありましたが、「反応経路がわかる程度」といった程度の認識しか持っていませんでした。そんな私が今回お世話になったのは、前田研究室です。ここで私は、専門としている光反応の経路解析に取り組むこととなりました。
意外なことに、反応経路の探索は思いのほか順調に進みました。プログラムに参加した当初の目的は早々に達成できたのです。そこからは前田先生とのディスカッションを重ね、さらに計算を繰り返した結果、非常に有意義な研究成果を得ることができました。この成果を基に、現在は論文の投稿を予定しています。
計算化学に興味を持つ学生や研究者で、AFIRに関心がある方がいれば、ぜひMANABIYAへの参加をお勧めしたいと思います。特に学生で、研究や生活の拠点を一時的に外へ移すことが許されるのであれば、札幌での生活を体験してみてください。きっと貴重で素晴らしい経験になるはずです。
最後に、私の研究を支えてくださった前田教授と前田研究室の皆様、そして美多教授とそのグループの皆様に、深く感謝申し上げます。札幌での滞在は、公私ともに非常に充実したものとなりました。特に、計算化学という複雑な領域である光反応の経路解析をスムーズに進めることができたのは、前田教授、そして山田君、神名君のおかげです。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
北海道の澄んだ空気の中で、計算化学の研究に没頭した日々は、私にとってかけがえのない思い出となりました。
(岐阜薬科大学創薬化学大講座 合成薬品製造学研究室 講師 山口 英士)