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2ICReDD国際シンポジウムー未来はすぐそこにある

 「Toward Interdisciplinary Research Guided by Theory and Calculation」をテーマに、11月27日~29日の3日間の日程で第2回ICReDD国際シンポジウムが北海道大学で開催されました。合成化学、光化学、計算化学、情報科学など、さまざまな分野の研究者が一堂に会し、「計算化学がどのように実験を先導できるか」について活発な議論が行われました。

第2回ICReDD国際シンポジウムの講演者、およびICReDD側の主催者とWPIワーキンググループメンバー

 総勢12名のシンポジウム講演者のうち、3名の講演者(写真右)が多様かつ複雑な化学構造の構築を可能にする最先端の技術を紹介し、合成化学の幅広い可能性について言及しました。また講演者の1人であるAndrei Yudin教授(トロント大学)は「計算と理論的予測には大きな可能性がある。」と語りました。

計算科学を専門とする講演者(写真左)は、化学反応の反応機構を深く掘り下げて反応効率を向上させることができる現代の計算化学の有用性とその具体的な研究成果について述べました。 また、別の講演者等(写真右)は、これら両方の長所を組み合わせること、すなわち実験を進めるうえで計算化学を用いた解析や予測がいかに有効であるかを、高選択性触媒および高度な発光材料の設計などを例に示しながら議論しました。特に、Djamaladdin Musaev教授(Emory University)は「計算と実験を相補的に用いる事が重要です。我々は実験者や理論研究者ではなく、科学者なのです!」と述べられました。

また、Mu-Hyun Baik教授 (韓国科学技術院;写真左)の講演は、理論に基づいて実験を完全に制御するために、計算化学者がどのように実験を設計するのかという話題にまで及びました。Baik教授は「計算化学は実験科学者に化学反応の新しい概念をもたらすだろう。」と語り、さらに瀧川一学特任准教授(理研およびICReDD;写真左)は、実験と計算がお互いにどのように関わり合えるかという議論に新たな視点を加え、わずかな実験データから、機械学習による迅速な予測がいかにして可能になるかを示しました。

 シンポジウム2日目には、若手研究者によるポスターセッションや、前田理拠点長によるMANABIYAワークショップも行われ、ICReDDの基幹技術であり、未知の化学反応のネットワーク全体を予測できる強力な計算手法であるAFIR(人工力誘起反応)法が紹介されました。

 理論が化学を先導し、未知の化学反応を予測できるようになるのはいつになるか? という参加者からの質問には、さまざまな講演者から「未来はすぐそこにあります」というコメントが返されていました。

 実験科学者はすでに、他の基本的な実験装置と同様の技術としてさまざまな計算を日々の研究の中で使っています。一方、計算化学者と情報科学者はこれまで、計算によって化学反応を合理的に説明することで実験に反映させたり、計算とデータ解釈に基づいて新しい化学反応を予測していました。しかし、昨年ICReDDが設立され、理論主導による化学を目指した技術開発と新たな融合を目指すこととなり、今後、分野融合が新しいレベルに押し上げられ、化学へのアプローチ方法が根本的に変わることが期待されています。

 今回のシンポジウムで、様々なトピックについて活発に議論してくださった講演者および参加者の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。ICReDDの今後にご期待ください。

講演の質疑応答時だけにとどまらず、コーヒーブレイク(写真は講演者のFahmi Himo教授)やポスターセッションでも活発なディスカッションが行われました。