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2回鈴木章賞授賞式 ~著名な化学者を表彰し、新たな伝統を強化

2023年1月11日(水)、第2回鈴木章賞の授賞式が北海道大学フロンティア応用科学研究棟・鈴木章ホールからのオンライン配信にて執り行われました。

    

鈴木章賞は、本学ユニバーシティプロフェッサーである鈴木章名誉教授の2010年ノーベル化学賞の功績を称えるとともに、鈴木先生が卒寿を迎えられたことを記念して、2021年に創立されました。鈴木章賞は、化学反応開発に顕著な業績を収めた実験化学分野の研究者へ授与されるアキラ・スズキ・アワードと、計算/理論化学、情報科学分野の研究者へ授与されるアイクレッド・アワードの2つの部門から成っています。

授賞式では、鈴木章賞組織委員会 委員長であるICReDDの澤村正也教授からの本賞の概要説明に続き、第2回アキラ・スズキ・アワードが発表され、カリフォルニア大学バークレー校のJohn F. Hartwigヘンリー・ラポポート化学教授に授与されました。

  

「初代アキラ・スズキ・アワード受賞者であるSteve Buchwald氏とは共にクロスカップリング化学の発展に力を注いできましたが、彼に続いて私がこの賞をいただけたことは、特に光栄なことです。」

Hartwig教授が学生として有機化学入門の講義を受けた1983年当時は、鈴木 章先生の最初の論文が発表された直後で、まだクロスカップリングは学部生に教えられていなかったのだそうです。

「私たちは sp2混成軌道で置換反応はできないのだと教わりました。ですので、学部レベルで教えられる有機化学の基本的な手法では不可能とされた類の化学を可能にした鈴木クロスカップリング反応と、その反応のシンプルさには本当に心を打たれ、私のキャリアを通して今も強く印象に残っています。」

Hartwig教授は現在とこれまでの研究室のメンバーや、メンター、家族からのサポートに感謝の意を述べました。また、研究室に在籍した日本からのポスドクたちの貢献に触れるとともに、自身と日本とをつなぐ重要な思い出について話されました。

「日本の同僚たちとの関係や、日本への旅について思い返すと…  1998年に開催されたNozaki Conferenceのために北海道に行ったことがありますが、私の研究生活の中で最も思い出深い旅の一つとなりました。」

授賞式は続いて鈴木章賞組織委員会 副委員長であるICReDDの武次徹也教授より、第2回アイクレッド・アワード受賞者が発表され、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のKendall N. Houkディスティングイッシュト・プロフェッサーに授与されました。

 

「私が敬意を持っている研究機関からこのアイクレッド・アワードをいただき、大変光栄に思います。私はこれまでの研究活動において、有機化学における計算の活用を向上させようと努めてきましたが、おそらく現在においてICReDDは、計算化学のフロンティアを開拓した、世界でも最も卓越した研究機関であると言えるでしょう。」

続いて、Houk教授は自身の長い研究キャリアの目から見た計算化学分野の進化について話されました。

「計算機のスピードは私の大学院生の時代と比べて一千億倍などと表現しても大げさではないほど格段に速くなり、Pople教授をはじめ様々な研究グループによって大変素晴らしいプログラムが開発されてきましたが、現在はICReDDの前田グループがその役を担っています。さらにはICReDDで行っているように、情報科学と組み合わせることで、10年前の予想を遥かに超えることができるようになっています。」

最後にHouk教授は、計算化学の分野に貢献してきたすべての人々、中でも自身のグループのメンバーに感謝の意を表しました。

「もちろん、私のグループにも感謝の意を述べたいと思います。私が行ってきた研究は何百人という優秀な大学院生やポスドクたちの貢献があって成し遂げたものですから。」