【ポイント】
・材料探索の効率化のため、一連の半自動的な物質探索スキームの開発を行った。
・本手法を用いることで、少数分子の評価によって従来手法よりも多くの類似分子をカバー可能であった。
・本スキームで得られた分類モデルを用いることで、80%以上の精度でポルフィリン誘導体の良溶媒の予測に成功した。
【研究の内容】
ポルフィリン誘導体は,光熱療法や光線力学療法,色素増感太陽電池,光電子材料など様々な用途に不可欠であるため,その特性を改善・最適化するための研究が盛んに行われている。一方でポルフィリン誘導体は、しばしば凝集体を形成したり不溶化したりしてしまうことが多く、適切な溶媒を選択するための溶解性の予測は重要な課題となっています。
ポルフィリン誘導体の溶解性を予測するため、化学探索空間の定義、劣モジュラ関数最大化による空間内の分子の優先順位付け、ロボットを用いた自動計測、機械学習によるモデル推定を行う、一連の半自動的な物質探索スキームの開発を行いました。
劣モジュラ関数最大化によって選択された分子の評価順序を用いることで、少数分子の評価(10分子:全評価対象分子の0.13%)によって比較的多くの類似分子(全評価対象分子の32%)をカバー可能でした。これは、従来手法よりも高いカバー率でした(ランダムサンプリング:~7%、不確実性サンプリング:~4%)。本スキームで得られた二値分類モデルは、80%以上の精度でポルフィリン誘導体の良溶媒を予測することができました。今回開発した手法は、初期段階の材料探索を加速するものと期待できます。
本研究は、ソニーグループ株式会社と北海道大学との共同研究によるものであり、本研究の一部はJSPS科研費 (JP21H01924)及びJST-ERATO (JPMJER1903)の助成を受けたものです。
半自動的な物質探索スキームの概念図
STEP 1: 対象分子の集合から優先順位を、劣モジュラ関数最大化を用いて決定。
STEP 2: 優先順位の高い分子を入手または合成し、続くステップで測定用の溶液を調製。
STEP 3: ロボットを用いた自動化UV-Vis吸収分光を行い、スペクトルを測定。
STEP 4: 測定したスペクトルから定性的/定量的な予測モデルを推定。