研究拠点「ICReDD棟」概要

設計主旨

ICReDDの研究そのものをプランにする

ICReDDは、計算科学・情報科学・実験科学の3分野を融合させることにより、革新的な化学反応の高速開発を目指す最先端研究拠点です。新棟では、議論~計算・情報分析~実験のサイクルをもつ研究活動を、活動の活発度のグラデーション(交流~集中)に置き換えることでプランを構成しています。建物中央の交流のための吹抜空間を軸に、デスクスペース、実験室等のより集中する作業のためのスペースが段階的につながる構成で、各分野の研究が無理なくシームレスにつながる融合研究のための環境をつくっています。

ローコストな汎用技術だけでZEB Ready スペックを実現

省エネ設計においては、特殊な仕様・設備によらず、汎用的な技術・設備での性能向上を図り、一般的な大学理系施設と同等のコストでZEB Ready相当の環境性能を実現しました。特に注力したのは、消費割合が大きい空調・照明負荷の削減です。建築面では、高断熱化を前提としながら、開口の南北面への集約(東西の直射抑制)、開口率の抑制(外皮面積あたり20%未満)、庇等のファサードデザインによる日射制御により、外皮性能の指標となるBPIを基準値より約40%低く抑えています。空調では、外皮性能の強化による熱源容量のスリム化、機器の効率化等により、基準値から約50%の省エネを実現。照明では、LED化に加えて、設計照度の適正化、在室検知制御の採用等により、基準値から約80%の省エネを実現しています。

積雪寒冷地における採光・通風のためのパッシブデザイン

高断熱化し、外壁や開口部の面積を抑えた建築は、厳しい気候から内部を守ることができるものの、外壁から離れた建物中央に採光・通風が届きにくくなる傾向にあります。そのため、建物中央の吹抜空間を活用し、光や風の物理的な特徴を利用することで、外壁面積や開口部を抑制しながら、建物全体への採光・通風の導入を図っています。融合研究の場を象徴する交流空間が、自然を中に取り入れる空間装置として機能する事を意図しています。

キャンパスマスタープランに基づくデザインマネジメント

北海道大学では、キャンパス・施設整備において大学の専門的・学術的知見を活かすべく、キャンパスマスタープランに基づき、教職協働によるキャンパスマネジメント体制を構築しております。本事業は、事業立案から竣工に至るプロセスを通して、本体制のもとに実施しました。事業初期から一貫して専門性の高いプロジェクトチームを構築する事で、標準的な予算や工期の中での最大限の品質確保を図りました。

 
建築データ
  • 施設名称:    北海道大学 北キャンパス総合研究棟8号館(ICReDD棟)
  • 所在地:     札幌市北区北21条西10丁目(北海道大学構内)
  • 構造規模:    RC造一部S造、地上5階、塔屋1階
  • 延床面積:    5,612.74㎡
  • 竣工:      2023年2月
  • 基本計画・監修: 北海道大学サステイナブルキャンパスマネジメント本部・同施設部
  • 設計:      石本建築事務所
  • 監理:      北海道大学施設部施設整備課
  • 施工:      戸田建設(建築)、北海電気工事(電気・機械)
  • 撮影:      酒井広司
  • 備考:      BELS評価5つ星取得(ZEB Ready相当)
             近代建築2023年7月号掲載  バックナンバーはこちら