研究

プレスリリース プラスチック材料を開始剤とするラジカル反応の開発医薬品や機能性材料をより安全で環境に優しく生産するための有機合成プロセス開発へ

ポイント

・ボールミルを用いたメカノケミカル条件下で、プラスチック材料がラジカル反応の開始剤として機能。
・従来の爆発性のあるラジカル開始剤の代替として、安全かつ安価なプラスチック材料を使用可能。
・医薬品や機能性材料を安全でクリーンに生産するための新しい有機合成プロセスの開発に期待。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)、同大学大学院工学研究院の伊藤 肇教授、久保田浩司准教授らの研究グループは、ボールミルを用いたメカノケミカル法を用いることで、プラスチック材料をラジカル開始剤として用いるラジカル連鎖反応の開発に成功しました。

ラジカル連鎖反応は、医薬品・生理活性物質や機能性材料の合成などに幅広く用いられている重要な有機合成反応の一つです。この反応は、一般的にラジカル開始剤と呼ばれる反応剤が必要です。従来、ラジカル開始剤としてアゾ化合物や過酸化物、有機金属化合物などが用いられてきましたが、それらの試薬は反応性が高く、爆発性の懸念がありました。したがって、安全で取り扱いが容易なラジカル開始剤の開発が求められていました。

研究グループは、ボールミルを用いたメカノケミカル条件下、ポリエチレンなどの汎用プラスチックがラジカル開始剤として機能することを見出しました。この方法では、プラスチック材料をボールミルで粉砕することで発生するメカノラジカルが、小分子を活性化することで、ラジカル連鎖反応が進行します。また、本手法では有害な有機溶媒を用いずにラジカル連鎖反応を実施できることも特徴の一つです。今後、安全で高効率かつ環境に優しい省溶媒メカノケミカル有機合成プロセスの開発が期待できます。

本研究成果は、2023年12月22日(金)Journal of the American Chemical Society誌にオンライン掲載されました。

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