研究

プレスリリース 固体内で高秩序回転型運動を示す 新しいギア型分子結晶の開発に成功噛み合う分子間配列構造により、新たな結晶性ギア型分子を開発

ポイント

・新たなギア型運動を示す分子結晶の開発に成功。
・温度変化により固体中で分子ギア運動の様子を可逆に変調できるギアシフト現象を世界初で発見。
・機能性分子マシンの設計に関する分野で重要な進歩。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の陳 旻究准教授は、同拠点並びに同大学大学院工学研究院の伊藤 肇教授、同拠点のチツベロ・ミカイル特任助教、リャリン・アンドレイ特任准教授、同拠点並びに同大学大学院理学研究院の武次徹也教授と共同で、固体中で高秩序回転型運動を示す、新しいギア型分子結晶の開発に成功しました。

ギア(歯車)は、現実社会(マクロスケール)における動力の伝達や調整に必要な機械部品です。一方、遥かに小さい分子サイズの世界(ナノスケール)においても、例えば細胞内で「分子モーター」と呼ばれるタンパク質が連動して働くことでギア運動し、機能を発揮しています。これに触発されて、ナノスケールでのギア運動を人工分子によって模倣する研究も盛んであり、機能性分子マシンの開発において重要な研究対象となっています。しかし「ギア型分子」はこれまで、主に溶液系で研究されており、分子性結晶内で分子レベルのギア運動を研究した例は非常に少ないのが現状です。

研究グループは、クラッチスタック構造を形成する分子を独自でデザインし、新しい「ギア型分子結晶」の開発に成功しました。この結晶中では、隣接する回転部位同士が互いに連動して回転型運動を示します。さらに、この結晶に温度変化をさせると、分子ギア運動の様子が変化するギアシフトのような特性を示すことを世界で初めて見出しました。

今後、本研究の設計指針を用いて、結晶内で分子間ギア運動を示す多様な機能性固体材料を開発し、その特徴である、従来の固体材料では得られない高秩序回転型運動を活用して、特異な発光性・熱特性・半導体特性の開発が期待されます。

本研究成果は、2023127日(木)、Journal of the American Chemical Society誌にオンライン掲載されました。

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分子間クラッチ-スタック構造を用いた新しいギア型分子結晶の開発に成功。