研究

プレスリリース ヒト脳腫瘍グリオーマモデル細胞の悪性度を評価するCancer GPSを開発革新的な異分野融合研究技術!がんの悪性度評価に期待

ポイント

・水溶性赤色発光分子に基づくCancer GPS(がん悪性度評価システム)を開発。
・細胞を傷つけることなくヒト脳腫瘍グリオーマモデル細胞の悪性度の数字による可視化を実現。
・数時間にわたる持続的な診断を可能とし、がんの悪性度評価法の開発に期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院、同大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の長谷川靖哉教授、同拠点のワンメンフィ特任助教、同拠点並びに同大学大学院医学研究院の田中伸哉教授の研究グループは、赤色発光分子を用いたCancer GPS(がん悪性度検査システム)を開発し、光を用いたヒト脳腫瘍の悪性度解析に成功しました。本研究は、京都大学の田中 求教授及び山形大学の松葉 豪教授らのグループも共同研究として参加しています。

悪性度の正確な評価は治療の鍵となります。発光分子プローブを利用したバイオイメージング技術は、細胞や組織の観察及び解析に非常に有力です。がんの「位置・形」を明らかにするための発光分子プローブの研究が国内外で活発に行われています。一方で、がんの「悪性度」に関する情報を取得するための検査は侵襲性が高いものもあり、偶発的な合併症の危険性が高く、経済的・身体的・精神的に大きな負担を伴うことも認識されています。このため、非侵襲性の発光分子プローブが、がんの「悪性度」検出技術として注目を浴びています。

今回開発したCancer GPS(Cancer Grade Probing System:がん悪性度評価システム)は、赤色発光分子を水溶性にし、バイオイメージング技術を用いてin vitroでヒト脳腫瘍グリオーマモデル細胞の悪性度を数字で可視化しました。Cancer GPSは、腫瘍の増殖プロセスにより数時間にわたる持続的な診断が可能であり、in vivoでがんの動的な観察と評価ができるため、持続可能な開発目標(SDGs)を満たす次世代の医学研究技術への応用展開が期待されます。

なお、本研究成果は、2024年1月22日(月)公開のNature姉妹誌Scientific Reports誌に掲載されました。

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悪性度の高い脳腫瘍NHA/TSRAにCancer-GPSカプセルが取り付き、がん細胞内に侵入する様子。