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1回国際シンポジウム : ICReDDへの期待高まる

ICReDDでは、3月12日(火)と13日(水)に第1回目の国際シンポジウムを開催しました。WPIの新たな研究拠点として昨年10月に発足し、今回のシンポジウムではICReDDの様々な展望についての発表が行われました。

ICReDDでは、計算科学、情報科学、実験科学の三つの学問分野を融合させることにより、人類の繁栄に必要不可欠な薬や物質を生み出す「効率的な化学反応」の設計、制御を目指しています。

前田教授(北海道大学・ICReDD拠点長)は、まず始めにICReDDとしてのビジョンを、次いで拠点の戦略やメンバーを紹介し、どのようにして化学反応経路や条件を予測するかについての自身の研究について語りました。Varnek教授(ストラスブール大学・ICReDD主任研究者)は到達目標に対してどのような構造や反応が適しているかの予測のために、計算による化学反応探索がいかに活用できるか解説しました。List教授(マックスプランク石炭研究所・ICReDD主任研究者)は、巧みな触媒設計によって化学反応が制御可能であることを説明しました。伊藤教授(北海道大学・ICReDD副拠点長)は、新しい化学反応開発の実験的探索において、計算から得られる指針を用いることで、実験研究での問題を解決に導いてくれた実例を踏まえた研究発表を行いました。

講演者はICReDD所属研究者だけではなく、伊丹教授(名古屋大学・WPI-ITbM拠点長)からは、自身の研究やWPI-ITbM研究拠点長としての経験や研究を話していただきました。また、湊教授(京都大学)からは複雑な組合せ問題における最適解を見つけるために開発されたアルゴリズムの実証に関するお話を、山本教授(中部大学)にはペプチド合成に関する自身の画期的な研究の背景と利点について講演をしていただきました。

ICReDDは、社会を変えるような革新的化学反応の高速開発を目指しています。真に有用な反応を見つけるために研究者の経験と運に頼るのではなく、計算科学と実験に基づいた方法の組み合わせ、体系的な探索を行うことで、化学反応の完全制御を達成することができます。特に、巽教授(名古屋大学・WPI-ICReDDプログラムオフィサー)の「反応を制御できれば、全ての化学を制御できます」という言葉が、それを物語っています。

巽教授のこの発言からは、ICReDDに対する高い期待が伺えます。このシンポジウムでは、ICReDDには研究を進めていく上で必要なものがすで揃っており、それらが非常にうまく調和していけることが、参加者に明確に示されました。

開会・閉会の挨拶や講演者一覧については、こちらの記事、またはシンポジウムのプログラムをご覧ください。

第1回ICReDD国際シンポジウム参加者との集合写真(写真: @studi-j)

筆者 : シェンツ・ダニエル、日本語訳 : 石倉 香理