研究

MANABIYA成果 高温のリチウム電池応用に向けたポリケトン固体電解質の比較

MANABIYAシステムは他研究機関、他大学、企業の研究者が短期間ICReDDに滞在して、研修と共同研究を行うプログラムです。以下の論文には、筆頭著者であるRassmus Andersson氏と第2著者であるIsabell L. Johansson氏がMANABIYAシステムに参加したことにより実現できた成果が含まれています。2人とも2022年にICReDDの猪熊泰英教授の下で一ヶ月研究に従事し、ポリケトンの合成技術を学びました。当時、Andersson氏とJohansson氏はウプサラ大学のJonas Mindemark教授の研究室の博士学生でした。

この論文では、高温で動するリチウムイオン電池では通常失敗する液体電解質の代わりに使う固体電解質として、ポリ(1-オキソヘプタメチレン)(POHM)というポリケトンの利用可能性を調査しました。結晶性の高いPOHMと、部分的に不飽和でより結晶性が低い類似体であるPOHM-70の、リチウムイオン電池の高温動作における適合性を比較しました。POHMは最初に一時的に高い比容量を示しましたが、時間とともに劣化しました。一方、POHM-70は導電率が低いものの、高温での動作に必要な安定性を示しました。ポリケトンの組成をさらに調整することにより、高いイオン伝導度と機械的安定性の両方を持つ固体高分子電解質の開発につながる可能性があります。

固体高分子電解質であるPOHMとPOHM-70の比容量(左)と電気抵抗(右)の比較。