研究

プレスリリース 計測過程そのものに人工知能を介入させることで計測を飛躍的に迅速化!所望の識別精度を保証しつつ測定すべき領域を必要な回数だけ自律的に視る

ポイント

・人工知能(AI)を計測過程に介入操作させることで、診断精度を保証した数百から数万倍の迅速化を実現することに成功。
・AIが自律的に無駄を省き必要な分光情報を重点的に獲得。
・ラマン信号が微弱な生物試料に対し数学的に高精度を保証した迅速計測の実証化が期待。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同大学電子科学研究所の小松崎民樹教授らの研究グループは、北海道大学大学院情報科学研究院の中村篤祥教授、大阪大学大学院工学研究科の藤田克昌教授、京都府立医科大学大学院医学研究科の原田義規准教授らと共同で、ラマン分光計測に対して、人工知能(AI)を計測過程に介入操作させることで、励起照射の形・パターンを自律的に制御し、無駄を省いた必要な分光情報を重点的に獲得することで、精度を保証した診断を数百から数千倍迅速化することに成功しました。観測ユーザーが最大許容できる誤診断の割合を事前に設定することでユーザーの多様なニーズに応答することも可能としました。

本成果は計測時間が大幅に掛かり、生物試料への応用が困難であるラマン分光計測を飛躍的に迅速化するものであり、従来の細胞診では判定困難な病気診断への応用、乳がん診断(手術すべきか否かの迅速診断)、iPS細胞の成熟度の迅速評価、半導体における迅速異常検知、マイクロプラスチックの迅速検査など様々な応用に繋がるものと期待されています。

なお、本研究成果は、2024314日(木)オンライン公開のProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaに掲載されました。

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計測が進むにつれて(時計の針で比喩的に表現)、その都度、人工知能が次にどの領域を照射・観測するべきかを自律的に判断し、次々に照射点を計測系へ指示し、試料中に悪性部位があるか否かを事前に設定する識別精度を数学的 に保証した迅速計測を実現する概念図。