インドのChandigarh University Uttar PradeshのSameeta Sahoo博士が、ICReDDのMANABIYA (ACADEMIC) プログラムを利用して猪熊 泰英教授の研究グループに滞在し、環状分子化学に関する共同研究を行いました。この共同研究を含む成果が、Chemical Communications誌に掲載されました。
本研究では4つのチアゾール環から構成される環状分子「カリックス[4]チアゾール」の合成に成功し、その構造および配位特性を明らかにしました。チアゾールのみから構成されるカリックス[4]チアゾールは、合成上の困難さからこれまでに得られておらず、その性質も未解明でした。研究グループは、Hantzsch型チアゾール形成反応を利用することによりカリックス[4]チアゾールの単離に成功しました。単結晶X線構造解析の結果、1,3-alternate型の立体構造を形成することが明らかになりました。また、強酸存在下におけるプロトン化体では、水素結合様式に応じて異なる立体構造をとることも確認されました。
カリックス[4]チアゾールは4つのチアゾール窒素を配位部位として、Zn2+、Co2+、Ni2+と1:1の金属錯体を形成しました。従来のカリックス[4]ピロールでは、脱プロトン化を伴うアニオン性配位子として金属イオンと配位することが多いのに対し、カリックス[4]チアゾールは中性の四座配位子として金属イオンを取り込み、カチオン性錯体を形成するという特徴的な配位特性を示しました。また、Co2+錯体はアミン分子との結合能を示し、カリックス[4]チアゾールが金属配位を利用した分子認識にも展開可能であることが示されました。
本研究により、これまで未踏であったカリックス[4]チアゾールが新たな環状分子骨格として合成され、その特徴的な構造および配位特性を明らかにしました。今後、カリックス[4]ピロールとは異なる性質を持つ環状配位子として、新しい金属錯体や分子認識系への展開が期待されます。
本研究成果は2026年7月7日(火)、Chemical Communications誌にオンライン掲載されました。

論文情報
Calix[4]thiazole: an elusive macrocycle with coordination properties
Narendra Nath Pati, Keita Watanabe, Sameeta Sahoo, Yuki Ide, Yasuhide Inokuma
Chemical Communications, 2026, 62, 15280–15284.
DOI: 10.1039/D6CC02980A