研究

超高強度ダブルネットワークゲル新展開

概略

ハイドロゲルは、ひも状分子である高分子の3次元網目構造の内部に多量の水が閉じ込められた素材です。ハイドロゲルは固体と液体の性質をあわせ持っているため、固体のように形状を保ちながらも液体のように物質透過性があり、さらにハイドロゲル内部では溶液化学反応を行うこともできるなど、ユニークな性質を示します。生体組織も水を含んでおり、ハイドロゲルは生体との親和性の高い生体適合性材料としても期待されています。しかし、一般的なハイドロゲルはゼリーのようにとても壊れやすく、材料としての応用には適していない素材でした。この問題に対し、我々は脆い網目と柔軟な網目を複合させることにより、超高強度ダブルネットワークゲル(DNゲル)を開発しています1,2。DNゲルは、水分を約90%含みながらも極めて丈夫で、トラックでひいても壊れません。この丈夫さとゲルとしての性質を活かし、DNゲルの様々な応用研究を進めています。

ICReDDでの取り組み

我々はICReDDにおいて、DNゲルと化学反応や生体組織との相互触発による新分野開拓を進めています。化学反応との相互触発として、DNゲルを特殊な反応場とした新規化学反応の開発、およびその新規化学反応がもたらすDNゲルの更なる高機能化に挑戦しています。その例として、筋肉のように鍛えると強く大きく成長するDNゲルの開発があげられます3。生体組織との相互触発としては、DNゲルと生体との相互作用制御に基づく新規医療材料の開発を目指しています。例えば、DNゲルの表面で培養された細胞の挙動がゲルの表面物性(電位・柔軟性)により大きく変化することを、ICReDDの他のグループとの共同研究により見出しています4

超高強度DNゲルの写真
鍛える(延伸する)ごとに強靭化するDNゲル

引用文献
  1. Gong, J. P.; Katsuyama, Y.; Kurokawa, T.; Osada, Y. Adv. Mater.  2003, 15, 1155.
  2. Gong, J. P. Soft Matter.  2010, 6, 2583.
  3. Matsuda, T.; Kawakami, R.; Namba, R.; Nakajima, T.; Gong, J. P. Science 2019, 363, 504.
  4. Frauenlob, M.; King, D. R.; Guo, H.; Ishihara, S.; Tsuda, M.; Kurokawa, T.; Haga, H.; Tanaka, S.; Gong, J. P. Macromolecules  2019, 52, 6704.