研究

反応経路自動探索法の開発

概略

全ての物質は原子の集合体です。もし、原子を積み木のように自由に組み立てることができれば、どんな材料も医薬品も、すぐに作れてしまいそうな気がしませんか?しかしながら、問題はそれほど簡単ではありません。何故なら、原子を組み上げる化学反応の主役となる「原子の動きの全貌」を予測することが困難であったためです。もちろん実験によって無限の可能性の全てを調べ尽くすこともできません。

未知の「原子の動きの全貌」を予測するには、化学反応の経路を人が考えられる範囲を超え自動探索できる計算法が必要でした。私たちは、人工力誘起反応(AFIR: Artificial Force Induced Reaction)法と呼ばれる計算法を開発し、未知の「原子の動きの全貌」の予測を可能にしました1,2。AFIR法は、分子同士もしくは分子の中の部分構造同士に仮想的な人工力をかけ、構造変化を誘起します。この操作を系統的に繰り返すことで、与えた反応物を未知の生成物へと変換する経路を計算することができます。その際に得られる反応経路のネットワークを解析することで、未知反応の予測が可能となります。

AFIR法の概念図(左)とAFIR法によって得られる反応経路ネットワークの例(右)

さらに、AFIR法はそのアルゴリズムが非常に単純であるため、広範な種類の化学反応へと適用することができます。既に、有機合成反応、光反応、微粒子触媒、固体触媒、相転移反応など、様々な反応へと応用できることが実証されています3

これまでにAFIR法の適用実績がある化学反応の種類

ICReDDでの取り組み

ICReDDでは、AFIR法によって得られる反応経路ネットワークを情報科学の手法で解析し、その結果として予測される未知反応を実験的に実証する、という、これまでにない反応発見のスキームを実現します。この新しい反応発見スキームは、これまで実験的な試行錯誤によって行われてきた反応発見の可能性を劇的に拡大すると期待されます。AFIR法は、この反応発見スキームにおける中心技術となります。現状、この新しい反応発見スキームは単純な有機分子の合成に対して実現しています。今後、AFIR法の高度化や情報科学的な技術の活用により、より複雑な分子にも適用できるよう、取り組んでいきます。

引用文献
  1. Maeda, S.; Ohno, K.; Morokuma, K. Phys. Chem. Chem. Phys. 2013, 15, 3683.
  2. Maeda, S.; Harabuchi, Y.; Takagi, M.; Taketsugu, T.; Morokuma, K. Chem. Rec. 2016, 16, 2232.
  3. Maeda, S.; Harabuchi, Y.; Takagi, M.; Saita, K.; Suzuki, K.; Ichino, T.; Sumiya, Y.; Sugiyama, K.; Ono, Y. J. Comput. Chem. 2018, 39, 233.