研究

プレスリリース 機械学習による有機触媒の予測⼿法の開発柔軟な記述による触媒最適化の加速

ポイント        

・新たに開発した記述子を用いた機械学習により、高性能な有機不斉触媒の構造予測に成功。
・従来の化学者の直観に頼った予測手法と比較して、触媒開発の大幅な高速化・効率化に期待。
・2,2-二置換テトラヒドロピラン環の不斉合成に成功し、本戦略の有効性を実証。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点の辻 信弥特任助教、シドロフ・パベル准教授、長田裕也特任准教授、ヴァーネック・アレクサンドル主任研究者、リスト・ベンジャミン特任教授らの研究グループは、新たに開発した分子記述子を使った機械学習により、量子化学計算などを用いることなく選択性の高い不斉有機触媒の構造を予測し、実証することに成功しました。

これまでの不斉触媒の最適化は、化学者が検討結果から、より良さそうな構造を立体的、電子的な効果も含めて直観的に予測し、実際に合成して検討を行うという工程が一般的でした。それゆえ、異なる実験者が同じ実験結果を得た場合においても、その実験者の経験や直観に依存して触媒の設計と性能が大きく異なるという課題がありました。

近年、機械学習を用いて予測モデルを構築し、実験結果を定量的に評価する手法が開発されてきましたが、精度良く予測するためには計算資源と時間を非常に多く必要とする量子化学計算に基づいた分子構造や電子状態の情報が必要でした。

本研究では、予測精度を向上させるために触媒構造の記述に特化した柔軟な分子記述子を開発し、触媒の選択性に関する予測モデルを構築しました。また、その予測に基づいてアルケンの分子内ヒドロ官能基化反応における高選択的な不斉有機触媒の開発に成功しました。

本研究で実施した戦略は、有機触媒の枠にとらわれず、様々な不斉触媒開発においても、その開発速度を大きく加速させることが期待されます。

なお、本研究成果は、2023123日(月)公開のAngewandte Chemie International Edition誌にオンライン掲載されました。

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機械学習による不⻫有機触媒の予測⼿法の開発