研究

プレスリリース 二つの触媒の協働作用によりエネルギーから医薬品骨格を構築安価な酸誘導体と安定な芳香環を光照射下反応させてα-アミノ酸の合成に成功

ポイント

・安価なギ酸塩と安定なヘテロ芳香環や芳香環を原料に、新しい形式のカルボキシル化反応を開発。
・可視光照射下、二つの触媒を組み合わせて用いることで、脱芳香族カルボキシル化反応を実現。
・脱芳香族カルボキシル化反応により、医薬品の合成中間体であるα-アミノ酸を化学合成。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の美多 剛特任准教授の研究グループは、安価で入手容易な金属ギ酸塩(H–CO2M:Mはアルカリ金属)を一炭素資源として用いて、インドールなどの化学的に安定なヘテロ芳香環にカルボキシ基を導入する新反応の開発に成功し、α-アミノ酸の化学合成に成功しました。

ギ酸(H–CO2H)はカルボキシ基を一つ有する最も単純な有機酸で、工業的に多用されている化合物です。ギ酸は安価で低毒性であり、近年の最新技術を用いると、地球上に無尽蔵に存在する二酸化炭素ガスを還元することでも合成できます。

研究グループは、このギ酸の中和塩の一つである金属ギ酸塩と化学的に安定なヘテロ芳香環を原料に用いた、新しい形式のカルボキシル化反応の開発に成功しました。すなわち、水素原子移動(HAT)触媒と光電子移動触媒の二種類の触媒を組み合わせて可視光(青色)照射下反応を行うと、通常、求電子剤として働くギ酸が求核剤として振る舞い、インドール骨格を脱芳香族化しながらカルボキシル化反応が進行し、α-アミノ酸が生成することを突き止めました。生成するα-アミノ酸は、医薬品の合成中間体として有用な化合物です。

また、使用する原料の酸化還元電位や推定反応機構を量子化学計算(人工力誘起反応法(AFIR法)を含む)を用いて計算しながら効率的に反応開発を進めることで、ヘテロ芳香環のみならず、ナフタレンなどの芳香環に対するカルボキシル化反応の開発にも成功しました。

本研究成果は202323日(金)、ACS Catalysis誌にArticleとしてオンライン掲載されました。

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ギ酸塩と(ヘテロ)芳香族化合物を用いたα-アミノ酸の新しい合成法