研究

プレスリリース 世界最大サイズ固体内回転型運動を示す分子を開発かさ高いお椀型分子で包み込む手法により、従来の結晶性ローター型分子の制限を克服

ポイント

・固体中で駆動する世界最大のサイズを持つローター型分子の開発に成功。
・機能性分子マシンの設計に関する分野で重要な進歩。
・従来の固体材料からは得られない特異な発光特性や半導体特性の開発が期待。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の陳 旻究准教授は、同拠点並びに同大学大学院工学研究院の伊藤 肇教授、同大学大学院総合化学院博士後期課程の安藤廉平氏と共同で、固体中で分子回転を示す世界最大のサイズを持つ結晶性ローター型分子*1の開発に成功しました。

一般的に固体中の分子は、その周辺が密にパッキングされているため、ごく制限された運動しか示しません。一方、結晶性ローター型分子と呼ばれる固体材料では、分子やその一部が固体中で回転に近い運動を示します。この材料は、その回転型分子運動を用いて固体が示す発光特性、誘電特性、半導体特性、ガス吸着・脱着などの機能性を制御することが可能であり、付加価値の高い機能性を持つ分子マシン*2の開発において重要な役割を果たしています。特に、その回転型運動を示す部位の形やサイズを多様にすることができると、回転型運動を基盤とした固体機能の開発において大きな広がりを与えます。しかし、従来の結晶性ローター型分子では、その回転できる部位の形やサイズはごく制限されており、複雑な構造を持つ大きな分子を固体中で回転型運動を示させることは困難でした。

研究グループは、独自で開発したかさ高いお椀型の分子で回転部位を包み込む手法を用いて、三次元的に複雑な形状を持つペンチプチセンへ固体中で回転型運動を付与することに成功し、世界最大のサイズを有する結晶性ローター型分子の実現を見出しました。従来の結晶性ローター型分子では、ベンゼンのような単純な形でかつサイズが小さい回転ユニットが主に使用されましたが、本研究では五つのベンゼン環が三次元的に組み上がっているペンチプチセンを、固体内で回転型運動させることのできる分子設計手法の開発を達成しました。

今後、本研究の設計指針を用いてユニークな光物性や電子物性を示す分子が結晶中で回転できる固体材料の開発が可能なので、従来の回転型運動を含まない固体材料では得られない特異な発光性や半導体特性の開発が期待できます。

本研究成果は、2023831日(木)公開のAngewandte Chemie International Edition誌にオンライン掲載されました。

詳細はこちら。