研究

プレスリリース 機械学習で砂糖と塩を見分ける熟練研究者の「眼」を機械学習で実現、化学反応の画像解析に応用

ポイント

・砂糖と塩のような固体混合物の画像に対し機械学習を活用した混合比予測システムを構築。
・結晶多形や鏡像異性体の混合比、固相反応の収率予測も達成。
・スマートフォンのような携帯端末のカメラ機能による画像でも予測が可能。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の猪熊泰英教授、瀧川一学特任教授、井手雄紀特任助教らの研究グループは、機械学習を使って固体混合物の写真から混合比率を予測するシステムを開発しました。このシステムは、熟練した研究者の観察眼に代わる化合物分析や反応観測手段としての応用が期待されます。

化学研究における重要な発見の多くは、研究者の鋭い観察眼によってもたらされています。本研究では、長年の経験をもって培われる熟練研究者の観察眼を、機械学習によって再現することで、初心者にも共有可能な予測システムを構築することに取り組みました。

研究グループは、最も身近にある混同しやすい固体化合物として、砂糖と塩の混合物の分析を行いました。混合物の写真300枚とそれぞれの混合比率を用意して機械学習モデルを作成したところ、人間の観察眼を上回る平均誤差約4%で混合比予測に成功しました。同様のシステムを用いることで、専門的な分析装置を用いても判別が難しい結晶多形の比率や鏡像体過剰率、固体反応の収率予測も高精度で行うことができました。携帯端末付属カメラの画像でも適用可能であり、この機械学習システムはWeb上のサービスを介して、誰でも使用することができます。

このシステムは、化学プラントにおける反応モニターシステムやロボット合成の分析装置への応用のみならず、研究者の育成や目の不自由な人の研究サポートにも役立つことが期待されます。
なお、本研究成果は、2023823日(水)公開のIndustrial & Engineering Chemistry Research誌にオンライン掲載されました。

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熟練研究者の観察眼を本研究にて開発した画像を用いた機械学習システムにより再現。
本研究で使用した画像を用いた機械学習システムの概要。