研究

プレスリリース 触媒表面に吸着した分子の動きと分子変換過程を可視化分子の動きが触媒性能に与える影響を解明

以下は北海道大学触媒科学研究所が出したプレスリリースからの引用です。

北海道大学触媒科学研究所の高草木達教授、リュウサン博士研究員、朝倉清高教授、同大学大学院工学院量子理工学専攻博士後期課程のロホウ氏らの研究グループは、触媒科学研究所の長谷川淳也教授、清水研一教授、同大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の高 敏准教授、電気通信大学の三輪寛子特任准教授、東京電機大学の小倉正平准教授、東京大学の福谷克之教授、小澤孝拓助教らとの共同研究により、触媒表面に吸着した反応分子(中間体吸着種)がどのように表面上を拡散し、活性サイトに到達して生成物に変換されるのかを、原子レベルで可視化することに成功しました。

触媒はカーボンニュートラルを実現する上での重要な物質であり、SDGsへの高い貢献が期待されています。しかし触媒反応は複雑で、特に、”吸着した反応分子(中間体吸着種)がどのように表面を拡散して活性サイトに到達し、分子変換が行われるのか?”については、多くの場合不明でした。本研究ではこれらを解明するために、TiO2(110)表面にPtナノ粒子を担持したPt/TiO2(110)触媒上でのメタノール分解反応に注目し、すべての素過程(メタノールの吸着、拡散、分解)の追跡を試みました。その結果、メタノールはPt上で解離吸着後、メトキシ中間体としてTiO2表面へと移動し、TiO2表面上を特定の方向に沿って拡散することを見出しました。また、温度を上げると、PtとTiO2の界面に到達したメトキシ中間体はCH4に分解され、その他のPtサイトではCOに分解されるとともに、これらの生成比はPtナノ粒子密度に依存することを発見しました。すなわち、メトキシ中間体の拡散がメタノール分解特性に影響を与え、触媒性能の制御因子となることを明確に示しました。

なお、本研究成果は、2023年8月16日(水)公開の米国化学誌「Journal of the American Chemical Society」誌に掲載されました。

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Pt/TiO2(110)表面上のメトキシ中間体(左)、及び拡散・分解によるCH4、COの生成(右)。