研究

MANABIYA成果 計算を用いた低温メタン燃焼の触媒設計

MANABIYAシステムは他研究機関、他大学、企業の研究者が短期間ICReDDに滞在して、研修と共同研究を行うプログラムです。以下の論文には、筆頭著者である安村俊作先生がMANABIYAシステムに参加したことにより実現できた成果が含まれています。安村先生は2021年にICReDDの武次徹也教授の下で10週間研究に従事し、人工力誘起反応(AFIR)法を学びました。当時、安村先生は北海道大学触媒科学研究所の清水研一教授の研究室の博士学生でした。現在は東京大学生産技術研究所の助教です。

天然ガスは広く使用されている燃料ですが、未燃焼のメタン廃棄物は二酸化炭素の22倍の温室効果を持つため、問題となっています。メタンの排出物に対処する有望な戦略の一つはメタンの触媒燃焼です。しかし、酸素分子を酸化剤とする従来法では、高価なパラジウム触媒を大量に用いても200℃以下の低温でメタンを燃焼することは不可能でした。この研究では、人工力誘起反応(AFIR)法を用いた自動反応経路マッピングを利用し、オゾンによるメタン燃焼のためのより効率的で堅牢な主族元素触媒の設計に成功しました。

研究者はまず、触媒活性サイトの典型例(酸化還元、ラジカル、ブロンステッド酸、ブロンステッドおよびルイス塩基)を代表する分子を選び、これらの部位でのメタン燃焼の反応経路をAFIRで計算しました。ブロンステッド酸の代表分子である硫酸は最も有望であり、非触媒過程よりも低い活性化エネルギーを示しました。研究者は次に、異なる酸性度を持つ触媒をAFIRで評価し、より強酸性の触媒がより高い触媒活性を示すという一般的な傾向を見つけました。この傾向に基づいて、高い酸性を持つHß-Zeolite触媒を実験的に試験し、メタンの低温燃焼(低い活性化エネルギー)を実証しました。Hß-Zeolite触媒は従来のPd系触媒Pd/Al2O3よりも反応速度が442倍高いことがわかりました。Pd系触媒は水と二酸化硫黄の存在下で触媒劣化(活性低下)が起こりますが、Hß-Zeolite触媒は水と二酸化硫黄共存下の長期間の耐久試験条件でもメタンを100%に燃焼することに成功しました。

この研究は、自動化反応経路マッピングが触媒の計算化学的な設計において有用な戦略であることを示しています。