γ-ラクトンは天然有機化合物や医薬品に広く含まれる骨格であり、これまでに多くの化学合成法が開発されてきました。今回、ICReDDの研究者は安価なギ酸塩とアリルアルコールという非常にシンプルな出発原料から、可視光照射下γ-ラクトンを構築する手法を開発しました。アリルアルコールを原料としてγ-ラクトンを一段階で合成するのは初めてであり、様々な置換基を有するアリルアルコールに対しても反応が進行しました。
酸素原子の隣の炭素に2つのアリール基を有するアリルアルコールを使用すると、反応中にそのうちの1つのアリール基が隣接の炭素原子に移動することがわかりました。この新しいアリール基の転位の反応機構を理解するために、ICReDDの基幹技術である反応経路自動探索法(AFIR法)を用いることで、一つの出発分子の構造から可能性のある反応経路をコンピュータ上で網羅的に特定することに成功しました。アリール基の移動が起こる主反応の経路は、他の副反応の経路に比べて速度論的かつ熱力学的に有利であることがわかり、反応の全体像を明らかにしました。
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詳細は、Saeesh R. Mangaonkar、林裕樹、神名航、Suvankar Debbarma、原渕祐、前田理、美多剛らによる論文(DOI: 10.1021/prechem.3c00117)に掲載されています。