ポイント
- 環状ポリケトンはアルカリ金属イオン‘ゲスト’を収容(結合)するための効率的な‘ホスト’として働く
- 環状ポリケトンのアルカリ金属イオンに対する結合性を利用して、触媒としてハロゲン交換反応を促進する
- 鎖状ポリケトンの分子末端修飾による新規金属イオン結合性ホスト分子の生成
背景
ゲスト化合物の選択的な取り込みと放出制御は、ホスト-ゲスト化学において求められる重要な特性です。クラウンエーテルはアルカリ金属イオンを選択的に取り込む例としてよく知られています。新しいイオン結合性分子の実現はイオン吸着・輸送や触媒反応への応用のために必要です。
研究成果
ICReDDの猪熊グループは、1,3-ジケトンを繰り返し単位とする環状ポリケトンが環サイズに応じてアルカリ金属イオンを捕捉することを報告しました。その捕捉はアルカリ金属イオンとカルボニル酸素原子の間の複数の配位結合によって形成されていました。
アルカリ金属イオンと結合をもつ環状ポリケトンを用いることで、低極性溶媒中にもかかわらずハロゲン交換反応(Finkelstein反応)を促進させることが可能でした。環状ポリケトンのこの反応に対する触媒能は、ナトリウムカチオンとの結合の強さに比例していることがわかりました。鎖状ポリケトンの両末端を修飾することでアルカリ金属イオンに対する結合能の向上が達成されました。ポリケトン化合物の精密な制御によって選択的なアルカリ金属イオンを捕捉が可能です。
今後の展開
選択的に目的イオンを捕捉することが可能な環状化合物の生成は、ポリケトンベースのホスト-ゲスト化学領域の発展および機能性分子材料開発の可能性を広げるものです。
論文情報
Alkali metal ion binding using cyclic polyketones
Narito Ozawa, Kilingaru I. Shivakumar, Muthuchamy Murugavel, Yuya Inaba, Tomoki Yoneda, Yuki Ide, Jenny Pirillo, Yuh Hijikata, Yasuhide Inokuma
Chem. Commun., 2021, 58, 2971–2974. (Inside front cover) DOI: 10.1039/d2cc00361a
Selected for the themed collection: Chemical Communications HOT Articles of 2022 and 2022 Pioneering Investigators