研究

固体状態でスイッチ機能を有するインディゴ誘導体

本研究はChem Sci誌のPick of the Weekとして選定され、ChemSci誌のフロントカバーに掲載されています。

ICReDDのファン・チュン・ヤン准教授はフィンランドのタンペレ大学とドイツのフンボルト大学ベルリンの研究者との共同研究で、有機高分子に組み込んだインディゴ染料の誘導体が固体状態で効率的な光スイッチ機能を持つことがわかり、スマートマテリアルや生物学への応用に有望な化合物であることを示しました。

特定の光に当てられると構造が可逆的に変わる分子を光スイッチと呼びます。デニム生地を作るための原材料であるインディゴ染料は、合成的な改造により低エネルギーの赤色光で活性化する光スイッチに変えることができます。大半のスイッチが高分子材料や生体組織にダメージを与える紫外線や、高エネルギーの可視光で活性化するのに対し、低エネルギーの赤色光で活性化する光スイッチは有利だとされています。インディゴ誘導体が溶液中で光スイッチとして働くことはこれまでにも示されていましたが、材料へ応用するためには固体状態でも同じ機能を持たなければなりません。

研究者らは6種のインディゴ誘導体を5種の高分子に組み込み調べた結果、固体状態での光スイッチング特性へ影響する鍵となる3つの要因があることが分かりました。1)柔らかい高分子ほどインディゴ誘導体の構造変化に対応しやすいこと、2)インディゴ誘導体にかさ高い側鎖をつけると、分子間に空間ができ、構造変化に対応できるようになること、3)インディゴ誘導体の添加量が少ないほど分子間の凝集を減らすことです。これらの要因を最適化することにより、固体状態でも溶液中と同等の光スイッチ機能を実現することができました。これは、固体での赤色光スイッチという珍しいケースであり、インディゴ誘導体のスマートマテリアルや生物学への応用の可能性を示しています。

本研究成果は2023年2月22日(水)、Chemical Science誌にオンライン掲載されました。