研究

プレスリリース SARS-CoV-2オミクロンBA.2株のウイルス学的性状の解明

SARS -CoV-2(COVID)の変異株であるオミクロンBA.2株のウイルス学的特徴に関して、ICReDD研究者を含めた共同研究の成果がCell誌に発表されました。ウイルスの感染拡大を統計モデリングで分析した結果、BA.2株の実効再生産数は従来のオミクロンBA.1株より1.4倍高くなり、BA.2株がBA.1に置き換わり、流行の主流を占める可能性を示しています。

回復期患者から採取した、ワクチン接種後に誘導される抗体の各COVID株に対する効果を調べた結果、BA.1株と同様に、BA.2株はワクチン接種により誘導される中和抗体に対して高い抵抗性を示すことが明らかとなりました。ファイザー/ビオンテック社ワクチンの3回接種後に産生された抗体は、BA.2株とBA.1株両方に対して中和能を示したものの、デルタ株や先祖株であるB.1.1系統に対する効果ほどではありませんでした。また、BA.2株は、ワクチン未接種者がBA.1株に感染した際に獲得した免疫に対し、ワクチン接種者のそれと比較して約4倍抵抗性が高いことが判明し、ワクチン未接種でのBA.1株感染では、BA.2株に対する免疫が作られないことも明らかになりました。また、BA.2株は3種類の抗ウイルス治療用抗体(カシリビマブ、イムデビマブ、ソトロビマブ)に対して高い抵抗性を示すことを明らかにしました。

ハムスターを用いた感染実験の結果、BA.2株のスパイクタンパク質を持つウイルスは、BA.1株のスパイクタンパク質を持つウイルスよりも肺組織内でのウイルス量が多く、BA.2株の病原性が高いことが示唆されました。ただし、別の研究ではヒト集団でのBA.2株とBA.1株の感染および入院リスクは同程度であり、病原性の差が認められなかったという発表もあるため、ヒトと今回使用した動物モデルとの間には差異がある可能性があります。

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