研究

プレスリリース mRNAワクチンカギを"片手"握る脂質を解明立体異性体の制御により、安全性と効果を両立

ポイント

・ALC-0315の立体異性体を単離・合成に成功。
・異性体ごとのmRNA送達効率と細胞毒性を比較・解明。
・より安全で高性能な核酸医薬品・ワクチンの実用化に期待。

概要

リスト・ベンジャミン特任教授、辻 信弥特任准教授、田中伸哉教授、津田真寿美准教授ら研究グループは、mRNAワクチンなどに用いられる脂質ナノ粒子(LNP)の一つの「ALC-0315」について、立体異性体ごとの生物学的性質の違いを世界で初めて明らかにしました。

LNPは、mRNAのような核酸医薬品を体内で保護し、標的となる細胞に到達することを可能にします。LNPの主要成分であるイオン化脂質は、mRNAの細胞内への送達と放出に極めて重要で、中でもALC-0315はファイザー・ビオンテック製COVID-19ワクチンなどで使用されています、しかし従来使われてきたALC-0315は、3種類の立体異性体の混合物で各異性体が持つ化学的・生物学的特性はこれまで明らかにされていませんでした。

本研究では、ALC-0315の三つの立体異性体をそれぞれ極めて高い純度で合成し、その立体化学が、細胞への送達効率や細胞毒性に大きく影響することを初めて実証しました。また、構成脂質の立体化学を最適化することで、mRNA医薬やワクチンの安全性・有効性を高める新たな設計指針を提示しました。

本研究成果は、2025年7月31日(木)公開のアメリカ化学会誌にオンライン掲載されました。
詳細はこちら

 

(Adobe Stock | #403398013)