ポイント
- 濃硫酸をはるかに超える「超酸」中でも明るく蛍光発光し続けるBODIPY色素を開発。
- 50年以上利用されてきた蛍光色素BODIPYの最大の弱点であった、酸による分解を克服。
- 既存BODIPYの酸耐久性の限界を突破し、極限酸性環境でのセンサー・イメージング応用へ。

概要
北海道大学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同大学大学院工学研究院の猪熊泰英教授らの研究グループは、濃硫酸をはるかに超える酸性度を持つ「超酸」の中でも分解せず発光し続ける蛍光色素「超酸耐性BODIPY」の開発に成功しました。
BODIPY(ボロン–ジピロメテン)は50年以上前に開発され、高い発光量子収率を有することから、細胞染色やセンサーなど幅広い用途で利用されている最も有名な蛍光色素の一つです。しかし、この色素には応用範囲を大きく制限する最大の弱点がありました。それが、酸性環境下でホウ素原子が脱離する「脱ホウ素化反応」によって蛍光発光が失われてしまうという現象です。このため、優れた発光特性を持ちながらも、BODIPYは強い酸性環境では使用が困難であると長年考えられてきました。
研究グループは、三つのピロールを含む環状分子構造とホウ素原子の相互作用がシナジー効果を生み、結果として高い酸耐性が発現することを見いだし、この構造にBODIPY骨格を組み込むことで超酸耐性BODIPYの合成に成功しました。得られた超酸耐性BODIPYは、既存のBODIPYが10分以内に発光を失う硫酸や超酸中においても脱ホウ素化反応を起こさず、鮮やかな蛍光発光を1日以上維持することが確認されました。さらに、この超酸耐性BODIPYは官能基化によって発光色を変化させられるほか、酸性環境でのみ発光するセンサーとして機能することも明らかになりました。本色素は、従来のBODIPY色素では染色が困難であったNafion®ビーズや強酸性イオン交換樹脂の蛍光染色を可能にしたほか、近年環境への影響が懸念されているPFAS(有機フッ素化合物)の一つであるパーフルオロオクタン酸(PFOA)の蛍光検出にも応用できることが示されました。
本成果は、強酸性の極限環境における蛍光イメージングやセンシング技術の新たな展開につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年3月19日(木)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。
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